現況測量と確定測量の違い|土地売買や建築をスムーズにするために知っておきたいこと

先日、ある司法書士の先生からご相談をいただきました。
相続で土地を取得された方が、その土地にこれから家を建てようと考えているとのこと。
その際に「境界確定は必要なのか?」というお話になったそうです。
土地の所有者となる方は、
「境界確定なんて費用がかかるし、しなくてもいいんじゃないか」
とのお考え。
一方でご家族は、
「家を建てる前に、きちんと境界を確定しておいた方が安心」
とお考えとのことでした。
このように、境界確定測量をするかどうかは実際に意見が分かれることの多いテーマです。
そこで今回は、現況測量と確定測量の違い、そして土地売買や建築の場面でどのように役立つのかを整理してみたいと思います。
現況測量とは?
現況測量は、「現地に見えている土地の形や構造物をそのまま測る」 測量です。
既存の境界標やブロック塀を基準に図面を作成し、土地の形や面積を把握します。
よく使われる場面
- 不動産査定を受けるとき
- 建築計画の下調べをするとき
ただし、隣地所有者との立会いは行わないため、法的に境界が確定したことにはなりません。
確定測量とは?
確定測量は、「隣地の方と立会いを行い、境界を正式に確定する」 測量です。
境界標を設置し、境界を明記した「確定測量図」を作成します。
メリット
- 売買契約や相続の際にトラブルを防げる
- 登記申請に安心して使える
- 将来にわたり境界を明確にできる
つまり、境界を法的に確定させる方法が確定測量です。

不動産会社に相談した後でも必要になる測量
土地を売ろうと思ったとき、多くの場合は
「不動産会社に相談 → 買主が見つかる → 境界確定測量を依頼」
という流れになります。
しかし境界確定測量は、隣地所有者との境界を確認いただく立会日の日程調整や図面作成が必要で、3ヶ月ほどかかることが多いです。
売買が決まってから測量を始めると、契約や引渡しのスケジュールに影響してしまうことがあるのです。
不動産会社の対応はケースバイケース
不動産会社も境界が不明確な土地は取引が難しいことを、理解しています。
そのため、買主が見つかっていなくても、
- 「確定測量を済ませておいた方が売りやすいですよ」
- 「買主から測量を求められて慌てるのを防げます」
と勧めることがあります。
一方で、依頼者の費用負担を考えて
- 「まずは現況測量で売りに出しましょう」
- 「買主が見つかってから確定測量でも間に合います」
と案内するケースもあります。
つまり、不動産会社の方針や地域の慣習によって対応はさまざまです。
だからこそ、売主自身が主体的に判断できるよう、事前に土地家屋調査士へ相談しておくことが安心につながります。
事前に境界確定測量をしておくメリット
- 契約や引渡しの段階で慌てなくて済む
- 「確定測量図があります」と提示でき、買主からの信頼を得やすい
- 不動産仲介業者にとってもスムーズな取引につながる
あらかじめ確定測量を済ませておくことで、売主・買主・不動産会社の全員にとって安心な取引につながります。
売買しなくても無駄にならない理由
境界確定測量は、もし「やっぱり売らない」となっても無駄にはなりません。
- 相続で役立つ
相続人同士で土地を分けるとき、境界が不明確だとトラブルの原因に。確定済みならスムーズに進められます。 - 将来の境界トラブル防止
隣地との認識を揃えておけば、後々の争いを避けられます。 - 建て替えや土地活用にも安心
境界が明確であれば、融資や建築確認の際にも有利です。
つまり、境界確定測量は「土地を売るためのもの」ではなく「土地を安心して未来に引き継ぐためのもの」でもあります。
実際の相談から学べること
冒頭で紹介したケースでも、最終的に私はこうお伝えしました。
- 境界確定をしていなくても家を建てることはできます。
- しかし、境界付近に建物や外構工事を計画するのであれば、境界確定をしておいた方が安心です。
- 確定測量をしないのであれば、せめて現況測量を行い、登記されている面積と比較しながら、おおよその境界線を把握してから進めることをおすすめします。
ただ、家というのは非常に高価で、大切な資産になります。
境界をめぐるトラブルは一度起こってしまうと解決に多大な時間と労力を要します。
だからこそ私は、安心して家を建てるためにも、境界確定をしておくことを強くおすすめします。
まとめ
- 現況測量=現状を確認するための測量
- 確定測量=境界を正式に確定するための測量
- 不動産会社の対応はケースバイケース
- 事前に確定測量をしておくと売買がスムーズ
- 売らなくても相続や将来の安心につながる
- 建築前にトラブルを避けるためにも境界確定は大切
土地は大切な資産です。
「売るかどうかまだ決めていない」「これから家を建てようと思っている」
そんな段階でも、境界をはっきりさせておくことは安心につながります。
不動産売買を考えている方は、まず土地家屋調査士に測量を相談してみることも、ぜひ選択肢のひとつに入れてみてください。

